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歴史と法律についておべんきょうしたことをメモしていました。今はお散歩記録です。
2013年11月30日 (土) | 編集 |
 今回は、『プロゼミ行政法』(2001、石川敏行、実務教育出版)より行政法をまとめます。

1、意義

 ・行政指導とは、行政庁が行政目的を達成するために、助言・指導といった非権力的な手段で国民に働きかけてその協力を求め、国民を誘導して、行政庁の欲する行為をなさしめようとする作用。

2、行政指導の特徴

 (1)、非権力的作用である

  ・権力的作用とは、行政機関が国民に対して一方的に義務を負わせたり権利を奪うことを意味している。典型例が行政行為である。他方で、非権力作用とは、国民が服従を拒否した場合には強制することができない作用である。典型例が行政指導である。

 (2)、事実行為である

  ・法行為とは、権利義務という法律効果を発生させる行為である。よって、法行為から生じる法律効果すなわち権利義務の変動を否定することが「取消」となる。他方で、事実行為はなんら法律効果を発生させない行為である。よって、そもそも権利義務の変動を引き起こさない事実行為に「取消」は存在しない。

 (3)、法律上の根拠は不要

  ・行政指導は国民の任意の協力によるので法律上の根拠は不要である。
 
   判例) 石油ヤミカルテル事件で「石油業法に根拠をもたない行政指導であっても、独禁法の究極の目的に抵触しないかぎり、違法とはいえない」と判示している。

3、行政指導の問題点

 (1)、日本独自の行政指導

  ・行政指導は、日本に独特の行政スタイルである。

 (2)、なぜ日本で行政指導が力を持ったのか

  ①、行政が行政指導を重宝する理由

   ・行政が全く予想もつかない新たな事態に対処する場合、往々にして法令が欠如している。そこで、助言・指導・勧告など非権力的な行政指導を出すことになる。

  ②、行政指導が力をもった理由

   ・行政指導に対して国民は服従する義務はない。しかし、行政機関と良好な関係を保ちたいという配慮から日本人は本心は不満であるのに、表面上は「自発的」に行政指導に従ってしまう。この日本人の国民性が行政指導に絶大な威力を持たせた理由である。

 (3)、行政手続法の規制

  ・このように行政指導は事実上国民が従わなければならないものとなっているので、平成6年に制定された行政手続法ではその適正化をはかっている。

4、行政指導の種類

 (1)、助言的行政指導

  ・国民の利益を図る目的で行政機関が行う行政指導。
 
   例)、改良普及員が農民に行う営農指導、職安が失業者に行う職業指導

 (2)、規制的行政指導

  ・公益の増進を図る目的で公益に反する国民の行為を規制する行政指導。

   例)、旧通産省が石油業界に行った灯油値上げの抑制指導、建築主に対して行われる違反建築物の是正指導

 (3)、調整的行政指導

  ・相対立する当事者の利害の調整と紛争の解決を図る目的で行政機関が行う行政指導。

   例)、マンション業者と付近住民の紛争解決の話し合いを求める地方公共団体の指導

5、行政指導の救済手段

 (1)、取消訴訟

  ・行政指導は事実行為であるので「取消」はありえない。また、非権力的作用であるので「公権力の行使に関する不服の訴訟」である取消訴訟を使うことはできない。

 (2)、国家賠償

  ・違法な行政指導に従ったために、国民に何等かの損害は発生した場合には、国家賠償法1条による損害賠償を請求することは可能である。
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